現在不動産業に従事している方や宅地建物取引士の資格保持者の中にはいつか起業したいと考えている方もおおいのではないでしょうか。とはいえ、一般的に起業後の成功率は、 1年で40%、5年で15%、10年で6%、20年で0.3%、30年で0.02% とのことですので、そう簡単な道のりではなさそうです。

この記事では独立開業を考えている方に、成功するためのポイントや起業の流れ、メリット・デメリットなどを詳しく説明していきます。

 

不動産業を起業するメリット・デメリット

不動産業を起業する際はどのようなメリット・デメリットがあるのか気になりますね。

起業するために色々準備していても、「実際に起業したらお給料が今までより下がってしまった」、「維持ができず廃業してしまった」なんて声は多くみかけます。

不動産業は大きく分けて以下の3つに分類されます。

  • 不動産仲介業
  • 不動産管理業
  • 不動産賃貸業

そこでそれぞれの分野のメリット・デメリットについて詳しく説明していきます。

 

不動産仲介業を起業する際のメリット・デメリット

不動産仲介業は、不動産の売買や賃貸の際に買主と売主もしくは貸主と借主の間に立ち、売買契約や賃貸契約をに成立までサポートする仕事です。 基本的には売買契約が成立したときに、仲介手数料を受け取る というビジネスモデルとなっています。

成果報酬は宅建業法で定められており、以下の通りとなります。

  • 売買仲介の場合→「成約価格(400万以上)☓3%+60000円(税別)」「成約価格(200万〜400万)☓4%+20000円(税別)」「成約価格(200万以下)☓5%」が上限額 ※低廉な空き家等の売買を除く
  • 賃貸仲介の場合→「成約賃料☓1ヶ月分」が上限額
  • メリット→仕入れにお金がかからないので低リスクで起業できるという点です。売買価格が大きいほど、仲介手数料の金額も高くなるため、短期で高額を稼ぐ事もできます。
  • デメリット→仲介が決まらなければ、もちろん手数料が入りませんので、毎月安定したランニングコストを得ることは難しそうです。

不動産管理業を起業する際のメリット・デメリット

不動産管理業は、オーナーと入居者との間にたち、オーナーにとって不動産から得られる収入を最大化するために行う業務全般のことを指します。 オーナーと入居者のそれぞれが満足のいく住環境の維持をサポートしていく ことが最大の業務となるため、物件の管理・退去のサポートや入居者のクレーム対応も行います。

一般的な報酬は、家賃の5~10%程度の管理手数料となり、入居者が退去するまで毎月受け取ることができます。

  • メリット→管理業は仲介業より安定した収入を見込める上に、宅建業者の免許を所持する必要はありません。国土交通省により「賃貸住宅管理業者登録制度」という制度が作られましたが、登録は任意となっています。
  • デメリット→1件あたりの手数料が比較的少額なため、安定した収入を得るためには、多くの物件を管理する必要があります。

 

不動産賃貸業を起業する際のメリット・デメリット

不動産賃貸業は自社で土地や賃貸物件を購入し家賃を得て収入を得るというビジネス方法です。

報酬は自社で所有の物件や土地に応じて異なってきます。

  • メリット→毎月安定した収入を得られやすく、不動産管理業より多額の収入を得やすい点です。また、不動産管理業同様、宅地建物取引業法の免許は必要なく、国土交通省が発足した「賃貸住宅管理業者登録制度」に任意で登録する業者もいます。
  • デメリット→物件購入時にある程度まとまって資金が必要なうえに、空室が続くと収入が得られなくなります。銀行から借り入れしている場合には、空室が続くことにより返済とのバランスが取れなくなるというリスクもあります。

 

初期費用はいくら?一般的な開業の流れ

ここまで不動産業種別の起業によるメリット・デメリットを見てきましたが、そもそも起業までいくら初期費用がかかるのか気になる方も多いのではないでしょうか。

ここでは、一般的な起業の流れと初期費用を説明していきます。

 

【全不動産業共通】まずは法人を設立しよう!

まずは、法人の設立を行います。

大まかな流れは以下の通りです。

  1. 商号決定:会社名を決定する(使用できない文字もあるので注意してください。)
  2. 印鑑作成:法人用印鑑を作成してください。【約8,000円】
  3. 定款作成;事業目的、本店所在地、設立出資金、発起人氏名等の記載。
    ※行政書士の先生に頼むこともできます!
  4. 定款認証:管轄の公認役場で事前に定款をチェックしてもらい、認証をおこないます。
    ※行政書士の先生に頼むこともできます!【手数料:52,000円、印紙代:4,000円+行政書士依頼費】
  5. 登記書類作成:設立登記申請書、本店・資本金決定書、印鑑届出書など作成します。
    ※行政書士の先生に頼むこともできます!
  6. 資本金振り込み;1円からでも設立できますが、一般的には100万円〜300万円です。
  7. 会社設立登記:本店所在地を管轄の法務局で行ってください。【150,000円または資本金の0.7%のいずれか高い方】

 

 

【不動産仲介業限定】5人に対して1人以上の宅地建物取引士

不動産仲介業を考えている方は宅地建物取引士を5人に対して1人以上の割合で置く必要があります。

宅地建物取引士は国家資格となっており、毎年10月に1度試験があります。合格率は15%前後の難関資格ですが、不動産業に従事している方は5点免除の申請をすることもできます。とはいえ、全く勉強をせず受かるような簡単な資格ではありませんので、3〜12ヶ月かけて試験勉強する方が多いようです。

もちろん、起業する本人が宅地建物取引士の資格を持っていなくても、 従業員で資格を持っているものが5人に対し1人以上の割合でいれば問題ありません。 一般的に宅地建物取引士の資格をもった従業員には固定給+3万円の資格手当を支給しているようです。

  • 宅地建物取引士
    →受験料:7,000円
    →資格登録手数料:37,000円
    →宅建士証交付申請手数料:4,500円
    ※宅建士証の更新=5年に1度:15,500円

 

【不動産仲介業限定】宅地建物取引業の免許申請

宅地建物取引業の免許は、事務所がひとつの場合は所在地の都道府県知事、事業所が県をまたぎ複数ある場合は、国土交通大臣への申請します。

また、宅建業の免許の申請には事務所を持っていることも前提条件であるため、開業する前に準備しておくといいでしょう。

  • 国土交通大臣免許登録税:90,000円 ※更新→収入印紙:33,000円
  • 都道府県知事免許登録・更新→収入印紙:各33,000円

▶参考:宅地建物取引業免許申請の手引(国土交通大臣免許・東京都知事免許)

 

 

【不動産仲介業限定】営業保証金の納付

不動産団体,全宅,全日

不動産取引の相手方が損失を受けた場合に、その損失をしっかり弁済できるようにするための営業保証金の納付も義務となっています。

▶営業保証金制度(法務局に営業金保証を供託する制度) ※主たる営業所1000万円、従たる事務所(支店):1ヶ所あたり500万円

また、不動産保証協会に加入した場合、弁済業務保証金分担金を納付することで営業保証金の代わりとすることができます。

▶弁済業務保証金制度(宅地建物取引保証協会に供託する制度) ※主たる営業所:60万円、従たる事務所(支店):1ヶ所あたり30万円

現在は主に2つの保証協会に登録することが一般的で、それぞれのロゴマークから、 全国宅地建物取引業保証協会は「ハトマーク」、不動産保証協会は「ウサギマーク」 として親しまれています。

 

【全不動産業共通】事業の広告宣伝

起業後には少しでも多くのお客様に存在を知ってもらう必要があります。広告宣伝の方法は多岐に渡りますが、代表的な集客方法は以下のとおりです。(※がついているものは不動産仲介業のみ)

  • レインズ(指定流通機構)※
  • ポータルサイトの出稿 ※一部
  • 自社WEBサイトの作成
  • WEB媒体の広告(リスティング広告、FB広告、インスタ広告等)
  • 紙媒体の広告
  • ブログ、SNS、Youtube 等…

一般的に不動産仲介会社は上記全て行っているところが多いです。手間と時間がかかりますが、集客力こそが成功への近道といっても過言ではありません。

通常はレインズ・ポータルサイトへの物件情報入稿作業だけでも社員が3〜5人程度で数時間かけて行っています。少しでも人件費を抑え、作業を簡易化したいのであれば不動産賃貸システムなどを導入することをおすすめします。

おすすめの不動産賃貸システム

 

【全不動産業共通】各種事務用品を揃える

会社としてスムーズな業務をこなせるように、コピー機、固定電話、名刺、インターネット回線、文房具、顧客管理システム(楽楽賃貸EBSがおすすめ)等最低限のインフラは整えるようにしましょう。

 

 

 【成功の秘訣】起業に失敗しないための注意点!

一般的に不動産業は以下点が成功のポイントとなります

  • 初期費用・固定費を抑える
  • 起業する地域を厳選する

起業に失敗しないためのポイントひとつ目は、初期費用と固定費をどれだけ抑えられるかという点です。

不動産仲介業は営業保証金の納付、不動産賃貸業は住宅や土地の購入代金や税金などがかかり、初期費用だけ見ても他業種より高くなっています。起業したての時は売上も安定しないため、資金が持たず廃業してしまうなんてことも…。また、事務所の家賃、人件費なども資金難に陥る原因のひとつとなりますので、抑えられるところはしっかり抑えていきましょう。

また、起業する地域によって同業他社の数も違うので、既存の同業他社に勝てるほどの人気を獲得できるかどうかといった点も勝負になります。予め同業他社がどの程度いて、起業したら勝率はどのくらい見込めるのか調査することも大切です。

 

【必見】不動産業の起業に関するよくある質問

最後に起業をお考えの方が疑問に持つ5つの質問対して、現役経営者3人にインタビューしてみました。

業界の先輩からのアドバイスを参考に起業に対して考えてみましょう!

 

未経験でも始められるの?

未経験から独立開業することは可能です。しかし、全くの未経験からとなると「宅建士」の資格を有した人材の募集(資格保有者であれば問題なし)や実績がないため銀行からの融資を受けられにくいというデメリットもあります。

独立・開業時はキャッシュが少ないため、低予算で売り上げを上げなければなりません。不動産システムの導入などを検討し、低予算で営業を続けられる方法を今から考えておくことも大切でしょう。

 

40代からでも起業できるの?

不動産業界には40代になってから起業する方も多くいらっしゃいます。

ほとんどの方が業務経験10年以上で、今まで培ったノウハウや人脈を有効活用していく方が多いです。

ただ、40代であれば雇われとして働いていても、ある程度良いお給料をもらえている方が多いと思います。起業するとなると、今までの安定的なお給料制度とは大きく異なります。売上から経費を差し引いたものが収入になり、さらにその収入から税金も納めなければなりません。売上を増やし、経費を削減する努力を続けなければ安定した生活を送ることができないので、売上によっては以前よりは下がってしまうことも。

起業前に収入に関してのデメリットを考えておくことも大切です。

 

経営者と雇われはどちらが儲かるの?

前述したように、その人の力量によってお給料は異なってきます。

ただ、雇われのお給料は安定している一方、必然とお給料の上限が存在してしまいます。対して、経営者であれば、不安定ではあるが、やり方次第で数億稼ぐこともできるのです。

自分が将来どのような生活をしたいのかという目標にあわせて、働き方をセレクトするのもいいかもしれません。

 

起業後の一般的な年収が知りたい!

これも個人差がありますが、不動産仲介業では一般的に独立した年やその翌年の年収は200万円程度になっています。思ったより低くてがっかり…という方もいるのではないでしょうか。

ただ、どのくらいの年収になるかは人それぞれで、ずっと200万円くらいのままという方も入れば、1000万円以上もの年収があるという方も大勢います。

 

セミナーや本で学ぶことは意味があるの?

意味がないということはありません。経営のヒントがもらえたり、今まで見えなかった視点で物事を見ることができたりもします。

ただ、セミナーや本で学んだことを実践したからと言って100%成功するとは限りません。最終的には本人の能力・運・財力・人脈・人柄なども大きく関係してきます。経営者からアドバイスするのであれば、セミナーや本で学ぶよりも、実際に起業しながら学ぶことのほうが確実に多かったです。

 

起業前にしっかり情報収集して成功を収めよう!

「起業」というと成功者というイメージが強いですが、成功までの道のりはそう簡単なものではありません。あなたが知っている成功者は起業にチャレンジした方の中でもごく一部です。

特に不動産業界は初期費用が他業種よりもかかるので、資金面でショートしてしまう可能性も大いにあります。これから起業したいと考えている方は起業前にしっかり情報収集をし、準備しておくことが大切です。

 

こちらの記事もあわせて読まれています

【不動産】賃貸管理業務の内容と人気のサポートシステム(ソフト)を紹介!